ちょっと思ったんだけど、ブログカテゴリの「漫画」とか「小説」って「本」で統一していい気がしてくるね。1個とか2個しかない項目なんだし。
ブルボン小林のゲームエッセー ゲームホニャララあんまり言った事無いから知らないかもしれないんだけど、レティさんってゲーム雑誌をまったく講読してないのね。というよりも、最近のゲームのこと、ほんとにぜんぜんわからない。大体何年か遅れで値崩れしたゲームを遊んで当時に思いをはせることが多い。ここしばらくで発売すぐに買ったゲームなんて数えるほどしか無いんじゃないかなあ。思い出そうとすれば結構あるけどね。
そんなレティさんなので、この本のことも買うまではゲームのこと書いたマンガ本なのかなと思い込んでた。通販で買ったからね。ファミ通もまったく読んでないし、仕方ないね。届いて読んでみたら文字ばっかり!しまった!やられたぜ…と一人ごちたりもしたんだけど、まあせっかく買ったんだしがんばって読んだのよ。はー文字ばっかりの本読むと疲れるわー
本の評価としては、「超素晴らしかった」の一点に尽きるかな。著者のブルボン小林さんって人は文中で「自分が本当にゲーム好きなのかわからない」とか「難しいゲームはすぐに投げちゃうヌルゲーマーだ」とか何回も卑下する言葉を書いていたけど、そんな事なくって。この人は本当に「ゲームが好き」で「ゲームは凄い」事を知っていて「ゲームは面白い」ということを文章に記して他人に知らしめる事が出来る、才覚ある人物なのだと、エッセーを読んでてびしびしと。
もちろん、2005年~2009年に書かれた物なので、「ちょっと古い話をしてるなぁ」という単純な時勢の変化による懐古であるとか、「たぶんこのジャンルには詳しくないからこういう観点になっちゃうんだろうなー」みたいなわずかな視点のズレも感じられるんだよね。
けど、間違いなくこの人はゲームの面白くありかたを、もしくはゲームを遊ぶ意味を相当高い次元でわかってるんだなと思った。
引用したい名文句が物凄く多い。見出しひとつとってみても、「『面白い』ことが面白い」「ドラゴンボールは本当にゲーム化されたのか?」「楽しいから遊ぶとは限らない」「ゲームのルールは遊び手もつくる」「ゲームは『風俗』を記録しなくなった」とかね。そもそもの第一項、「コイン考」からして惹きつけられる。どんだけゲームが好きなんだと読んでてウキウキしてくる。
本文も凄く切り出したい物が多い。「ゲームを遊ぶ人とゲームを見てる人にはゲームの見え方が違う」「なぜ人がジェットコースターに乗るのか、それは10年に1度くらい本当に死人が出てしまうからじゃないか」「ICOはいい印象だが、途中でやめてしまった。風車の羽根によじのぼって進まなくても、ここは綺麗で静かだし、敵も追ってこないし、すわり心地のいいソファもある。二人でここで暮らせばいいじゃないかと思ってしまったのだ」「ネットゲームで一番強い人には『すごいね』という感想しか浮かばないが、ネットゲームで一番有名な人は尊敬出来る。有名になるにはその人個人のパーソナリティが問われるから」「ゲーム好きの我々はフラグを立てる事に慣れきっている。それは凄く特殊なことだ」「フィクションにおいて『博士』は便利だ。なにしろ博士が言うんだから、絶対に間違いがない。疑問符なしで筋は快適に進む。」…あーダメだ!全部抜き出したくなるくらいに一文一文が心を打っていくよ!
「ゲームを語る」という行為を抜本から見直さなきゃいけない感じがするくらい、凄い本だった。きっとレティさんも含めて、ゲーム(であり、他のメディアでもあり)を語る時には、思い思いのことを、思い思いの切り口で語りだすと思うんだけど、それがどういう行為であるのか、どういう意味を孕んでいるのか、自分の行為を"鑑みながら"こういう事をやる人ってほとんど居ないんだなってのが理解出来た。ほとんどいなかったと思ったのは、強烈な新鮮味を覚えたからで、それは無論レティさん何かに出来る事でもなくて。
ゲーム好きだからこその、絶対に許せない部分を提唱しているのも面白くって、単純にゲームというメディア・文化として捉えるんじゃなくて、やっぱり好きで好きで仕方が無いからこういう事をしちゃったんだなあ!!って痛感する。
特定の題材を持たず、しかしあらゆるゲームを内包して、それらを俯瞰しつつ独自の切り口で(しかもそれが無数にある!一体どれだけの知識と勉学を積めばこんなにさまざまな観点から物事を切り出せるんだろう!?)書けるこの人に対して相当な敬意を払いたいけど、ただの消費者であるレティさんに出来る事はせいぜいこの人の本を買うことくらいなんだよね。ある意味最大の敬意とも取れるけど。
ブルボン小林の「ゲームホニャララ」良作でした。そういえばレティさん、ゲームのエッセイって基本的に大好きだったなぁ。ゲームについて書かれたことを読むのがすきなんだろうね。Vジャンプに連載されてた「我輩はゲームである」とかずっと読んでたし。まだ連載されてるのかなあれ。
この人の作中で勧められていた「ゲームになった映画たち」というのも今度読んでみたい。
PR